[製品レビュー] オーシー - Osee「Lilmon 5」、シンプルなデザインながらも現場で必要な機能が満載
中国・北京にオフィスを構える、映像制作用モニターおよびスイッチャーブランド、Osee Technology Ltd.(オーシーテクノロジー)。
オーシーは、高精細な画質や直感的な操作性を兼ね備えた映像制作用モニターを提案しつつ、競争力のある価格帯を維持し、コストパフォーマンスに優れたモニターを製造しています。
今回は、スポーツやイベント中継、報道、バラエティー、ドキュメンタリーなどのENG撮影を行い、テレビ番組撮影からVP制作まで幅広く活躍されている、タイムコード・ラボの宏哉氏に、5.5インチオンカメラモニター「リルモン 5」の使用感を教えていただきました。

ここ最近、Osee(オーシー)のモニターを現場で見掛けることが増えてきたように思う。
5.5インチのOsee「T5+(2025年8月現在、国内でのお取り扱いはございません)」はカメラマンが個人持ちしてハンドヘルドカメラに取り付けてフォーカスチェックに使っていたり、「メガ 15S」は PVやCM撮影の現場でクライアントモニターとして使用されているのを見る。
モニターとしての品質は良く、コストパフォーマンスにも優れているようで、それらのユーザーからは高評価の声が聞かれる。
今回、銀一がOseeの日本国内代理店として製品との取り扱いを開始されたのをきっかけに、5.5インチモニターの Osee「リルモン 5」をご提供いただいたので、早速現場に投入し、その使い勝手を検証してみた。
仕様



「リルモン 5」は 5.5インチ・1920 x 1080pixのオンカメラモニター。
輝度は1000nits、コントラスト比は1000:1、視野角は178度(上下左右)。
タッチスクリーンによる、モニターコントロール。
本体サイズは 幅14.4 × 高さ8.85 × 奥行き2.44cm、重量は212g。
入出力端子は、標準HDMI端子が備わっている。その他に、イヤフォン端子とキャリブレーションプローブ用の2.5mmジャックがある。
ファームウェアアップデートやLUTを読み込ませるためのSDカードスロットを備え、また電源出力端子もあり、カメラへの電源供給もモニタ用電源から行える。
入力解像度は、最大4K(4096 x 2160)/UHD(3840 x 2160)は29.97P/30Pまで対応、2K(2048 x 1080)以下の解像度の場合は50P/59.94P/60Pのフレームレートに対応する。
電源は、NP-Fタイプバッテリーとロック付きDCバレル(2.1/5.5)を備え、最大輝度時の消費電力は8.1W。
※製品にバッテリー、電源ケーブルは付属しません。
モニター機能としては、「アスペクトフレーム」「セーフフレーム」「センターマーカー」「グリッド」「アナモフィックデスクイーズ」「フォーカスアシスタント」「ローテート」「フリップ」「オーディオメーター」「フォルスカラー」「ゼブラ」「ウェーブフォーム」「ベクトルスコープ」「ピーキング」「マルチスコープ」「ヒストグラム」「デログ」「ユーザーLUT」といった機能を網羅している。
ファーストインプレッション
Osee「リルモン 5」を手にした感じでは、コンパクトで軽量。
凹凸の少ないシンプルなデザインがスマートだ。
電源ボタンは右側面。軽く押すとモニターが起動する。
昨今のモニターは多様な機能を提供するためのOSを搭載しており、Osee製のモニターには「Swift OS(スウィフトOS)」という独自のOSが採用されている。OSの起動時間を含め、「リルモン 5」に入力信号が表示されるまで10秒ほど掛かる。
モニターOFFは電源ボタンを3秒長押し。起動中に短く電源ボタンを押すとタッチスクリーンのロック/アンロックが働く。
さて、映し出された映像は大変にクリアで綺麗だ。
「リルモン 5」の映像信号の内部処理は「22bit処理で正確なカラーとトーンを再現する」と謳われている。モニターキャリブレーションに対応できるぐらいなので、そもそものパネル性能が高いのだ。元から色や階調に難のあるモニターパネルではキャリブレーションする意味がない。
モニター表面はグレア加工だが、低反射・指紋防止コーティングのお陰で反射などはそれほど気にならず、色もフォーカスもハッキリと判断できる。
スペックを振り返ると、輝度1000nits・コントラスト比1000:1というのは他社のモニターと比べても飛び抜けてハイスペックという訳ではなく、標準的な仕様。
現在は2000-3000nitsのフィールドモニターも存在するので、1000nitsはもはや高輝度とは言えないかも知れないが、屋外撮影の現場に持ち出した場合の実際の見え方はのちほど記したい。
タッチパネルの反応性だが、アイコン類のタッチ操作のレスポンスは良い。
画面の左側のエリアを上下に指でなぞるとバックライトの明るさ調整、右側のエリアはイヤフォンアウトの音量調整となっている。こちらも非常にレスポンスはリニアで良いのだが、少し指を動かすだけで大きく数値が変化するため、設定を+1/−1などと細かく調整するのは結構コツが要る。できれば、もう少し数値変更に対してストロークが欲しいところだ。
なお、これらの設定項目はツールバーのモニター設定からも調整できるので、頻繁に変更しない場合は、そちらから調整しても良い。
画面の拡大は、スマホのように指2本を使って拡大縮小操作をするピンチアウト/ピンチインで行える。こちらの動作は、ややタイムラグを感じる。動き出しは遅れないのだが、指を止めても少しだけ拡大・縮小の動きが続くため、欲しいサイズよりも少し行き過ぎる感じだ。拡大してからの画面内移動などはレスポンスが良い。
モニターによっては、ツールアイコンの中に拡大ボタンが用意されているものも多いが、撮影中に瞬時に拡大したい場合などはピンチアウト操作が直感的で素早い。「リルモン 5」ではピンチアウトすると等倍に戻すにはピンチインして縮小していくしかないので、瞬時に等倍に戻せるように拡大キャンセルなどのボタンがあると、操作性が向上すると思われる。
タッチスクリーンを搭載したデバイスは、ビデオモニターに限らずカーナビのモニターなどを含め、現在ではスマートフォンのレスポンスと比較されてしまう。日頃使っているiPhoneやAndroidスマホ並のレスポンスの良さがないと、どうしてもユーザーは不満を覚える。その点で言えば、「リルモン 5」はピンチ操作だけは少しもたつきを感じるがタッチ操作やドラッグ操作は快適なので、ほとんどの場合は不満を感じることがないだろう。
さて、Osee製モニターに搭載されているSwift OSはカスタムメニューを作成でき、ユーザーごとのニーズに合ったメニューを提供してくれる。
「リルモン 5」では「MySets(マイセット)」の設定が可能で、最大8つまで作成可能だ。MySetsは、画面下部に表示されるツールの内容をカスタマイズできる機能。撮影内容に合わせて必要なツールだけを集めたセットを作ったり、使用するカメラ別にツールをまとめたりできる。
例えばカメラ別に設定する場合、カメラによっては外部出力にピーキングやゼブラ表示などを出力できない機種がある。反対に、そうした表示も出力可能な機種もある。そういう機能の違いがあるカメラを両方使う場合は、「リルモン 5」のピーキングやゼブラ機能を使うか使わないか判断が分かれるため、MySetsでそれぞれのカメラに必要なツールだけをまとめたセットを作れば良いのだ。
MySetsの作り方は簡単だ。ツールバーを表示している時に右下に出ているMySet previewボタンを押すと、8つのウィンドウが表示される。これが、設定できるMySetsの一覧だ。
次に、機能を追加もしくは削除したいMySetsのウィンドウをタップする。
すると選択したMySetsのツールが画面下部に表示された状態になる。その右側にある"+"のアイコンをタップすると、既に登録してあるツールのアイコンには"−"の表示が付き、タップするとツールを削除してよいか確認画面が出る。
反対に追加したい機能は、上段に表示されたツール一覧から選択できる。合計15個の機能から使いたい機能を選んで、MySetsに加えていくことができる。なお、ひとつのMySetsに加えられるツールは最大8つ。
また、同じツールを2つ以上、同一のMySetsに登録することもできる。最初は何の意味があるのかと思っていたが、同じツールでもそれぞれに違うパラメーターを設定できるため、例えば"Look"ツールを複数追加して、それぞれに違うLUTを登録すれば、異なるルックを瞬時に比べることもできる。
そうして作成したMySetsの切替は、画面の中央を左右にスワイプすると瞬時に切り替えられる。ただ、ツールバーの内容が切り替わったことが分かりにくい場合もあるので、切り替わった瞬間に MySets 1とか MySets 2 などと画面端に表示してくれるようになると、親切だろう。この点は、今後のファームウェアアップデートに期待をしたい。



現場にて
さて、実際に「リルモン 5」を撮影現場に持ち出してみた。
CM撮影の現場で、屋内・屋外両方の環境で撮影を行っている。
使用カメラは SONY FX6。純正の液晶モニターは3.5型液晶パネル(画素数1280 × 720pix)で輝度もそれほど高くないため、特に屋外ロケなどでは視認性が問題になることがある。
そこで、この撮影現場では純正モニターはタッチパネル操作用としてサブモニター扱いにし、メインモニターに「リルモン 5」を使用することにした。
なお、クライアントとディレクター用のモニターはOsee「メガ 15S」だった。
今回はカメラのHDMIアウトをクライアントモニターに入れる構成だったため、FX6のHDMIアウトを「リルモン 5」に入力し、「リルモン 5」の HDMIアウトからクライアントモニターへ繋いだ。

まず屋内での最大1000nitsという明るさは目が疲れてしまうので、輝度調整11段階中の「5」まで落として使用した。周囲が完全に暗くなる劇場などで使用する際は「0」まで落としても良いだろう。
SONY FX6 は外部出力にピーキングやゼブラが載せられない機種のため、「リルモン 5」のピーキングやゼブラ表示を使用。ピーキング機能では「Color」「Sensitivity」「Background」の3項目が調整できる。「色」「感度」「ピーキング使用時に映像をカラーにするかモノクロにするか」という選択肢だ。感度に関しては10段階で調整できるが、最小の「1」にしてもピーキングの範囲が少し広めだと感じた。もう少し繊細にフォーカス判定を行ってピーキングを載せられると良いのではないか。
また、これは「リルモン 5」に限った話ではないが、ピーキングを付けるエリアを調整できれば便利だなと思う。というのは、カメラビューファーとして 「リルモン 5」のような外部モニターを使う際、カメラ情報表示(キャラ)出力をオンにして使うことも多いため、そうした文字やアイコンにピーキングが付いてしまって、画面全体の視認性が悪くなるからだ。
キャラは画面の四辺に配置されているため、ピーキングエリアを画面全体の70-100%ぐらいの範囲で調整・選択できれば、キャラにピーキングが付きにくい状態に設定することが可能だ。是非そうした機能も検討してほしい。


タッチスクリーンのレスポンスの良さは、やはり現場でのモニタリングをスマートにしてくれた。必要な機能の呼び出しやキャンセルは一日の撮影の中で何度も行うので、タイムラグなく機能をON/OFFできるのはストレスがなく快適だった。
続いて屋外での撮影だ。7月の快晴の日。
「リルモン 5」には純正モニターフードなどがないため、輝度1000nitsでどの程度見えるか心許なかったが、結果は十分な視認性を確保できた。もちろん、もっと明るい方がよりハッキリとモニタリングできるのは間違いないが、製品によってはバックライトが明るいだけで、ハイの部分が飛んでしまって正しい階調をモニタリングできなかったことが過去にあったので、ただ明るさだけを謳うだけではダメ。
その点では、リルモン 5は無理な輝度稼ぎをしておらず、モニター表示を信用して撮影に臨むことができた。




また、バッテリーのもちが大変に良いことにも感動した。
最高輝度で1000nitsの明るさをもつにもかかわらず、最大8.1Wと省電力だ。
例えば NP-Fシリーズで最も小さい F550クラスは 16.2Wh前後だが、計算上は2時間バッテリーがもつことになる。実際にテストでF550を装着してモニター電源を入れっぱなしにしてみたが、バッテリーによっては2時間近く使えることが確認できた。
三脚にカメラを据えたりする撮影であれば、F750やF970の大きめのバッテリーを使った方が確実に長時間使えて安心できるが、手持ち撮影でRUN&GUNするような場合は、少しでも機材を軽量化できると身体への負担も抑えられる。
「リルモン 5」であれば、高輝度モニターながら薄型バッテリーの併用でも、実用面では問題なく運用することができそうだ。

まとめ
「リルモン 5」を実際の撮影で使用してみた感想は、シンプルなデザインながら必要なモニタリング機能が満載で、モニターとしての表示能力にも信頼がおけるということ。
先のCM撮影の現場の例では、「リルモン 5」での表示を基準に私が撮影を担当したのだが、チーフカメラマンや照明マン、ディレクターやクライアントからも私が決めた映像の明るさや色に対して修正や疑問が入るようなことはなく、「リルモン 5」の表示能力は信用してもよいと実感できた。
MySetsの使い勝手も良く、自分の使いやすいツールセットを組むことできたり、同じツールでもパラメーター違いの設定を登録しておけるなど、自由度の高さが評価できる。
タッチパネルでの操作もレスポンスの良さとUIのシンプルさから、ストレスなく使える。
またモニター本体が軽量な上に、小容量のバッテリーでも高輝度モニターの能力を発揮できる実用性が嬉しい。ミラーレス一眼カメラとの組み合わせなら、カメラのバッテリー交換の方が先に来るぐらいなので、その際に一緒にモニターのバッテリーも交換してしまえば撮影現場を止める時間も最小で済みそうだ。
これからも色々なカメラと組み合わせ、さまざまな現場に連れ出したいと思うモニターだ。
<商標>
※iPhoneはApple inc.の登録商標です。
※iPhoneの商標は、アイホン株式会社のライセンスに基づき使用されています。
※Androidは、Google LLC の商標です。
宏哉(Hiroya)プロフィール
timecode-lab./タイムコード・ラボ 代表
https://x.com/TimecodeLab
テレビ番組の撮影やイベントのネット配信、ドローン空撮など幅広い分野で映像と戯れる。
テレビカメラからミラーレス一眼カメラまでさまざまなカメラを使いこなし、のべ100ヶ国以上の海外ロケを経験。

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リルモン 5
5.5インチのオンカメラモニターです。
HDMI IN/OUT端子をもち、4K30pまでの信号の入力が可能です。HDRやLUTなどを内部22bit処理で正確かつ精細に表示できます。1000nitsの高輝度表示で、屋外でも良好な視認性を発揮します。
小型ながらもスイフトOSのタッチスクリーンがワークフローをサポートし、撮影現場の作業効率を高めます。

メガ 15S
高輝度の15.4インチプロダクションモニターです。
10bitデジタル信号処理技術と3Dコムフィルターを採用し、インターレース解除機能と正確なスケーリングにより、より滑らかで自然な画を再現します。
SDI 2系統入出力、HDMI入力を持ち、1500nitsの高輝度で屋外やスタジオでのディレクター、クライアントモニターとして最適です。キャリブレーターによるキャリブレーションやLUT、スコープ類なども充実し、DITモニターとしても利用できます。
また、モニターケースは背面を開いてサンフードとして使用でき、屋外撮影で高い利便性を発揮します。