エスプレッソディスプレイズ徹底レビュー - プロカメラマンの現場が求める色精度と携帯性
はじめに
プロフォトグラファーや映像クリエイターが求めるモニターの条件とは何だろうか。それは、どんな場所でも「正確な色再現」と「作業効率の良さ」を確保できることだ。特に屋外ロケや移動の多い現場では、手軽に持ち運びできる高性能モニターが必須となる。そこで今回は、プロの現場で急速に支持を広げているポータブルディスプレイ『エスプレッソディスプレイズ』を実際の使用感とともに徹底レビューする。

エスプレッソディスプレイズがプロカメラマンに支持される理由
同ブランドがプロフェッショナルカメラマンに選ばれる最大の理由は、その圧倒的な色再現性にある。一般的なモニターは「美しい」表示を重視する傾向があるが、エスプレッソは『美しさ』よりも『正確さ』を徹底的に追求し、Adobe RGBやDCI-P3など、実際の納品環境に必要な色域を完全に網羅している。これにより、撮影から編集、納品に至るまで一貫した色環境を実現できる。
製品ラインナップと仕様
エスプレッソディスプレイズは、プロフェッショナルの多様な現場ニーズに応える幅広いラインナップを展開している。




モデル名 | サイズ | 解像度 | タッチ入力 | 輝度 | 色域 | 重量 |
---|---|---|---|---|---|---|
espresso Display 15 Non-Touch | 15.6インチ | FHD (1920×1080) | なし | 最大300nits | sRGB 100% | 約765g |
espresso Display 15 Touch | 15.6インチ | FHD (1920×1080) | あり | 最大300nits | sRGB | 約865g |
espresso Display 17 Pro | 17.3インチ | 4K (3840×2160) | あり | 最大450nits | DCI-P3 100% | 約1.1kg |
共通仕様
・全モデルが薄型のアルミボディを採用

・USB-Cポート×2(映像+給電、DisplayPort Alt Mode対応)

・自動縦横切替機能(espresso Flowソフト使用時)
・マルチタッチ操作対応(Windows/macOS対応)※
・espresso Pen(4096段階の筆圧・傾き検知)対応
※espresso Display 15 Non-Touchを除く

エスプレッソディスプレイズの実践的メリット
DCI-P3による高精度な色再現
屋外やスタジオなど、どんな環境でも正確な色確認が可能。外部キャリブレーションソフトを使って、現場で即座にマスターモニターとの色整合性を確保でき、納品時のトラブルを回避できる。

実際に使用すると、自宅のマスターモニターとの色差がほぼなくなり、現像作業やクライアント確認も迅速でスムーズになることを実感できた。
※DCI-P3 100%対応は17 Proのみ対応
※Adobe RGB 100%対応は15 Proのみ(2025年7月現在国内未発売)
USB-C接続のシンプルなセットアップ
USB-Cケーブル1本で映像入力と給電が可能なため、現場での設置が迅速に行え、ケーブルのトラブルも少ない。

タッチパネルで直感的な現像作業
LightroomやCapture Oneなどをタッチ操作で直感的に調整でき、簡易修正もスムーズに行える。
※タッチ入力対応機種に限る

自動縦横切替でスムーズな撮影
縦位置、横位置の切り替えが瞬時に行えるため、撮影リズムを妨げない。
※本動作は『espresso Flow』アプリを用いた自動切替機能により実現している。

軽量・コンパクトかつ堅牢性
軽量ながらディスプレイには強化ガラスが採用され堅牢性があり、安心して現場で使用できる。
カメラバッグにノートブックPCと一緒に入れて運ぶことができる。

専用ソフトウェア『Jot』での直感的な書き込み・データ共有
エスプレッソディスプレイズの専用ソフトウェア『Jot』を使えば、撮影現場やクライアントとの打ち合わせ時に、画面上にペンを用いて直接メモや書き込みが可能になる。この機能により、写真のレタッチ指示や映像の修正点など、口頭では伝えづらい細かな要望をリアルタイムで明確に伝えることができる。
さらに『Jot』では、書き込み内容をその場で即データ化・保存することが可能だ。後で確認したり、チーム内で共有したりすることもスムーズに行えるため、クライアントとの認識のズレやコミュニケーションミスを大幅に削減できる。
実際に現場で使用した際、修正箇所やクライアントの意見をその場で正確に記録できたため、納品後のトラブルや再修正が劇的に減り、プロジェクト全体の効率化が図れた。

プロフェッショナルワークフローの具体的活用例
打ち合わせ・プランニング段階
撮影や映像制作の前段階である打ち合わせにおいて、正確なコミュニケーションは欠かせない。しかし、従来の紙ベースでの資料確認では、細かなニュアンスや修正点を共有しづらい。
エスプレッソディスプレイズ専用ソフトウェア『Jot』では、打ち合わせの際に参考画像や企画書を直接取り込み、espresso Penを用いて画面上に直接書き込みを行える。修正箇所やアイディア、スタイリングの指示をビジュアル的に伝えることが可能で、口頭やメールでは伝えきれない細かなニュアンスも明確に共有できる。
書き込み内容はその場でデータとして保存・共有が可能なので、打ち合わせ終了後の再確認や、撮影当日の資料としてそのまま利用できる。
撮影現場でのリアルタイム確認

撮影現場では、テザー撮影によるリアルタイムの画像確認が重要だ。エスプレッソディスプレイズは、高輝度で視認性の高い4K画面(Proのみ)を活用し、スタッフ用、モデル確認用、クライアント確認用など、複数台のモニターを用途に応じて使い分けることで、現場での意思決定スピードを格段に上げることができる。
『espresso Flow』を使用すると、モニターを縦位置・横位置に変更するだけで自動で画面表示が切り替わり、頻繁に向きが変わるポートレート撮影でも撮影リズムが崩れず、円滑に進められる。実際のロケ撮影で使用してみて、モニターにマット調のフィルム(別売りの「espressoCreator」)を貼ることで、外光や背景の写り込みはある程度軽減できた。特に緑の多いロケ地や木漏れ日の下では、環境光が映り込むことによる視認性の低下が起こりがちだが、この対策で実用レベルには十分達する。

ただし、さらに視認性を高めたい場合は、遮光フードの導入が理想的だ。特に日中の逆光環境下や、モデルと画面の同時確認が求められる現場では、その差は顕著になる。
「それなら光沢モニター+遮光フードでも良いのでは?」と思う読者もいるかもしれない。確かに遮光フードによりある程度の写り込みは防げるが、マットパネルやマットフィルターによる“広範囲かつ柔らかな反射軽減”は、光沢パネルでは再現が難しい。
結論として、遮光フードとマット処理は相互補完の関係にあり、どちらか一方では不十分だと言える。本レビューでは「最低限の工夫で屋外現場に耐えられるか」という観点で評価しており、その点で言えば、マットフィルターのみでも十分な実用性を確認できた。
※遮光フードはエスプレッソディスプレイズでは未発売
仕上げ・セレクト・レタッチ段階

撮影後の仕上げ作業では、セレクト作業やレタッチ指示の精度が最終成果物の品質を大きく左右する。『Jot』のペン書き込み機能を活用することで、クライアントや編集者と共にモニターを見ながら、採用・不採用カットを画面上で直接マークすることが可能だ。
さらに、レタッチが必要な箇所に対して具体的な修正指示をペン入力で画像上に直接書き込み、『肌の質感を柔らかく』『背景をよりクリアに』といった指示もビジュアル的に明確に伝えることができる。
現場での運用具体例
●クライアントとの現場確認用モニターとして色ズレなしのリアルタイム確認がを可能
●現場即時レタッチ・現像で納品スピードを大幅向上
●スタジオと同じ色環境をロケ現場で再現し、品質を担保する
●屋外でも即座にカラーグレーディング作業が可能になり、撮り直しリスクを軽減
●テザー撮影時のリアルタイムモニタリングで撮影効率を向上
総括
エスプレッソディスプレイズは、色の正確さ、携帯性、直感的操作性を兼ね備え、プロの現場における編集・確認作業を劇的に向上させる。現場に導入したことで効率化と品質向上を明確に実感しており、特に色再現に妥協を許さないプロにぜひお勧めしたい製品だ。
撮影・確認・仕上げ——写真制作のすべての工程において、エスプレッソディスプレイズは“妥協しない色と判断の正確さ”を現場にもたらしてくれる。美しさを整えるための道具ではなく、正確さで信頼を構築するための道具として、プロの表現力と判断力を支える存在だ。自らの写真に責任を持つプロフェッショナルにこそ、この一台を選ぶ理由がある。
高桑 正義 SEIGI TAKAKUWA
1980年 東京 生まれ。大学卒業後、印刷会社入社。東京写真学園卒業
アシスタントを経てフォトグラファーとして独立。Beauty Fashion Portrait 広告 雑誌を中心に活動しているフォトライティングワークショップ 高桑塾でプロからアマチュアまでと幅広い層に撮影とライティングを指導している。
Portfolio:
http://www.seigi-photograph.com
Instagram:
https://www.instagram.com/seigi_takakuwa_photography

エスプレッソ ディスプレイズとは
オーストラリア・シドニー発のポータブルディスプレイメーカーです。
世界中から厳選された高品質なコンポーネントを使用しているため、信頼性と耐久性に優れ、そしてシンプルかつ洗練されたデザインが特徴です。
製品ラインナップや、アプリケーション『espresso Flow』『Jot』の詳細は、ブランドサイトからご確認いただけます。
https://ginichi.site/espressodisplays#home